日本全国津々浦々、お正月や小正月の行事がありまして、それぞれに趣き深いものでございます。
しかし、信州は特におもしろみを感じてしまいます。
まずは大晦日。私の感覚では、おごちそうは元日の「あけましておめでとう」のおせち料理からなんですが、信州では大晦日からおごちそう大会です。
題して「お年取り」。「お年取り」のごちそう、や「お年取り」用のお酒など、みなさん準備なさるのが普通。
松本市出身で、映画「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズや「永遠のゼロ」、「海賊とよばれた男」などの監督・さんは「え?おせち料理の解禁って大晦日じゃないの?」と言うほど、大晦日からおごちそうなんです。
で、このお年取りに家にいないとかなり顰蹙を買うようです(苦笑)。
また、初詣では大晦日の深夜から出かけて、新年もお参りする「二年参り」というやり方がスタンダードなようです。
「二年参り」という言葉自体が、発見でございますな。写真は安曇野市の穂高神社の元日未明。
また、全国的に『どんど焼き』と称される行事も盛んです。松本あたりでは『三九郎(さんくろう)』と呼ばれます。
北信や南信では「どんど焼き」というようですが…。町会ごとに、松飾りや前年のお守り・御札・だるまなどを積んで焼くのですが、これが大きい。
背丈ほどのところもありますが、大きいところは高さ5mくらいになるんだそう。
支柱と松で円錐形になるようにベースを作り、燃やすものがどんどん詰め込まれます。
一番外側はだるまさんがぐるりと取り囲みます。まるでクリスマスツリーみたいなビジュアル。
3mとか5mの三九郎を作る町は、1~2週間前から骨組みを作って松を集めて準備なさるそうです。
これを燃やした後、オキで、柳の枝に付けた餅飾り=「繭玉」を焼いて、いただくのだそうです。
大柳町・新町・袋町の合同三九郎に参加していた地元の渡辺さんに伺うと「この火で焼いたお餅を食べると、一年間風邪をひかないっていわれてるんです」と、教えてくれました。
三九郎の時期にはスーパーに「繭玉」が売ってあるし、自作用に粉や食紅、柳の枝が並ぶそう。
松本市下馬出(しもうまだし)の料理屋さん「佐の春」では、お餅の形も繭型と鐘型の2種類作り、柳の枝に刺す小さいものと、大黒様にお供えする大きめなものと作ってらっしゃいました。
青・ピンク・白に飾り短冊もあって、華やか~。
さらに、珍しいのは「御神酒の口」。お神酒徳利にとってもきれいな竹ひご飾りが刺してあります。
松本市の「村山人形店」の村山謙介さんに伺うと「正月に御神酒徳利に刺すんですもので、各地にあるようなんですが、松本のはずば抜けてきれいです。
竹を糸のように割いて結い飾りにしています。
だるまと御神酒の口はお正月の定番商品ですね。
願をかけて一年間お役目を全うしたあとは、新年に買い替えてっていう…」と、教えてくださいました。
城下町で、生糸産業の恩恵にあずかって、もともと冬の農閑期の手仕事文化がしっかりしている松本だからこその風習なのかもしれません。
現在は、小正月行事は成人の日の連休に合わせて、行われています。
あめ市などと併せて、松本の町の風習やお祭りを楽しむ旅もおもしろいですよ~。
□ 新まつもと物語 →
http://youkoso.city.matsumoto.nagano.jp/
□ 村山人形店 →
http://murayama-ningyouten.com/home/
□ FDA フジドリームエアラインズ →
http://www.fujidream.co.jp/