つややかな萌黄色…というのでしょうか。透明感のある淡い黄緑色の絹糸が天蚕(てんさん)という蚕から取れる糸なんです。
この天蚕、皇后陛下も飼ってらっしゃるそうですが、江戸時代、天明年間に日本で最初に飼育し始めたのが安曇野市の穂高有明地区(当時は有明村)なのだとか。
その天蚕の飼育と、操糸、機織り技術の継承を行いつつ紹介しているのが、安曇野市天蚕センター。
安曇野市天蚕振興会事務局の上田能理子さんに案内していただきました。入り口にいきなり方言系だじゃれが…。
天蚕糸の特徴について上田さんは「糸自体が、電子顕微鏡で見ると、たくさん穴が開いている多孔性糸。
そこに光が乱反射して光るって言われています。天蚕糸が“繊維のダイヤモンド”って言われるのはそれが理由です」と、教えてくださいました。
光沢があるので、普通の蚕からの絹地に刺しゅう糸として使われたりします。
なめらかな絹地の上に、天蚕糸が艶やかに光るんですよ~。
普通の蚕と天蚕って、蚕の種類が違うんです。普通の蚕は家蚕種といってかいこ蛾科。桑の葉っぱを食べて育ちます。
天蚕は野蚕種といってヤママユ蛾科。ナラやクヌギ、カシワの葉を食べて育つんです。
比べると、大きさが二回りくらい違います。左の大きなほうが天蚕。
家蚕種は、何千年もかけて人間が飼いやすいように改良してきたものですが、野蚕種は天然もの。
飼育する時ネットは張りますが、雨が降ろうが風が吹こうが外でそのまま飼われています。外で育つので外敵の脅威にもさらされます。
鳥や蟻、カメムシなどが天蚕を狙います。また、1年に1回しか繭がとれない。
さらに「家蚕だとひとつの繭から1200mくらい糸が取れるんですけど、天蚕はその半分くらい。
6~700mくらいしか取れないんです」と、上田さん。結果、貴重な糸になるんですねえ。
全部天蚕糸で織った着物一着分って、700万円とかっておっしゃってました…。何の染色や刺繍、地模様もなしで。
また、天蚕センターは天蚕糸を織る職人への道を目指す人たちが学ぶ場所でもあります。
研修生の金原百恵さんは「絹糸とは違うピカピカした光り」も天蚕糸の魅力だとおっしゃいます。
まだまだ天蚕の糸を織るところまではたどり着いていないのだそう。
ちなみに布にする時は、天蚕糸だけでなく家蚕糸と組み合わせて織っていくのだそうです。
「天蚕は普通の蚕の糸と違って伸びるんですって。それを、普通の絹糸と天蚕糸をいっしょに混ぜながら織るのは容易なことではないんです。
しっかり勉強して織れるようになってからでないと、天蚕はとても高価なモノなので、練習でバンバン織れるものではないんです」と、おっしゃってました。
宝くじに、どーんと当たったら着尺買わせていただきます。ストールとかネクタイでも美しい艶は堪能できますが、かなりのお値段(汗)。
でも、紬糸を使った小物なら、今でも買えますよ~。カードケースやポーチなど、素敵です。
□ 安曇野市天蚕振興会 →
http://azumino.tensan.jp/index.html
□ 安曇野市観光協会 →
http://www.azumino-e-tabi.net/
□ FDA フジドリームエアラインズ →
http://www.fujidream.co.jp/