小林一茶の俳人としての評価が高まり、その晩年は各地に招かれることも多かったそうです。俳句の同人だったり生徒だったり、お金持ちだったり…。今でいう「講演会」の先生みたいな感じでしょうか?
一茶が招かれ滞在した場所のひとつに、北信濃の須坂市にある田中本家があります。ここは江戸時代から穀物問屋で味噌・醤油・酒なども扱う豪商だった家で、現在は江戸時代から残る建物を活かして「田中本家博物館」を運営しています。江戸時代から現代までの道具類(長押や各種たんすなど)・駕籠に衣装・漆器・陶磁器・文具・玩具、さらに古文書まであって、何度訪ねてもおもしろいところです。今回ご案内は、田中本家博物館の学芸員で田中家の息子さん、田中和仁さんにお願いしました。
「すずしさや縁(えん)からすぐに川ちょうず」
これが、一茶が田中本家で詠んだ句です。和仁さん曰く「一茶が田中家に泊まった翌朝に詠んだ句らしいんです。屋敷の縁側から出てすぐ目の前に大きな池がある庭がありまして、朝のすがすがしい気分を呼んだのでしょう。“川ちょうず”というのは、寺などにある手洗いのことを指しますが、この句では庭の池のことを指しているのでしょう」と。一茶が泊まったお屋敷は明治3年の家事で消失してしまったそうですが、お庭はそのままだそう。配された木々も石も変わってない、一茶が当時見たであろう庭を、今、私たちも見ることができます。和仁さん自身もこの「大庭(おおにわ)」「秋の庭」と呼ばれる庭が一番好きだそうで、「秋の紅葉は特にいいんですよ。大杯(おおさかずき)と呼ばれる大きなもみじがありまして、朱塗りの杯をイメージさせるような、大きな真っ赤な紅葉になるんですよ。ドウダンツツジもいい色になりますねえ」と、おしゃってました。田中本家の庭の紅葉は11月になったくらいが見ごろだそう。10月は周囲の山々の紅葉シーズンなんですって。
また、今年は博物館開館20周年記念なので、特別企画も目白押しです。12月2日までは「豪商の花嫁 伝来の婚礼衣裳」と題して、代々のお嫁さんが着た婚礼衣裳が展示されます。これがもう、ほんっとうに見事なんです。女性必見!ですよ。美しさにため息をつくと同時に、江戸時代の職人技に酔いしれていただけます。
さらに10月は、江戸時代田中本家四代目の婚礼記録に基づいた婚礼料理をいただく食事会も企画されています。スペシャルな食器も使われるそうですよ~。
田中本家の喫茶では、残された古文書にしたがって再現された江戸時代の食事もいただけます。殿様に出された「やまどりのお雑煮」は予約無しでもいただけます。物品だけでなく古文書までしっかり残されているのが田中本家の特徴で、学術的な価値の高さを生み出しています。で、私たち庶民は見て、食べて、その恩恵にあずかれる、と。
□ 田中本家博物館 → http://www.tanakahonke.org/
□ 小林一茶生誕250年 → http://www.issa250.com/
□ FDA フジドリームエアラインズ → http://www.fujidream.co.jp/