9月下旬の取材中、伊那市役所で「今が旬のものが入荷してますよ」との情報が。それは「活きイナゴ」!
“あなご”じゃないよ“イナゴ”だよ。昆虫ですよ~っ!!!で、その現場を訪ねました。信州の珍味を扱う「つかはら」です。店先に置かれた直径80cmほどの桶の中に、グリーン×黒のイナゴがわしゃわしゃと…。
ご主人の塚原保治さんは「長野から新潟、山形まで、国産イナゴはうちしかない」と、ニコニコ笑顔。稲刈りが始まる9月下旬からが旬なのだそう。生きたまま、30×50cmくらいのネットに入れて販売されるのですが(今年は1袋3800円でした)、これがかなり売れるんだそう。多い人だと10kgくらいお買い上げだとか。「昔からの家庭の味だからね。今年は、うちはうまく煮えたよ~」なんて、話で盛り上がるんですって。ゆでて何度も洗って甘く煮つける…信州の母の味のひとつなんですね。もちろん、完成品も売ってますよ。これが、意外に美味なんです。イメージとしては小エビの佃煮みたい。日本酒のあてにして、チビチビ食べるのがよろしいかと(笑)。
そして、もうひとつ、信州を代表する珍味が…「おかいこさま」。蚕のさなぎです。繭を作ったあと中に残ってるさなぎちゃんを、甘辛く炊いた佃煮にします。昔は貴重なタンパク源。しかし、現代信州人の好き:嫌い比率は2:8くらいかと思われます。「おいしい」「あれだけは無理」「あれは鮒のエサだ」などなど、皆、言う事が違います。“昔食べさせられてた”人から“今も大好き”な人まで、年齢もバラバラ。この蚕の佃煮のおいしさを熱く語ってくれたのが、松本市役所観光温泉課の大野正幸さん。「大好きでよく食べますよ。日常食です。ごはんに載せて食べるのが大好き。お弁当にも入ってます。食感は、ちょっとパサついたような感じですが中はしっとりしてて、中から臭いような香りがして、それがおいしくて病みつきになるんです」と。え?しっとりしつつパサついて、臭いけどおいしい?矛盾してない?「芋焼酎の“クサイけどうまい”と似てます」ときっぱり。
興味はあるけど、ちょっとビビった私。だって8割の信州人が好きとは言わないんですよ。で、いざ入手したらこのビジュアル!!!
1人じゃ勇気が出ないので、スタジオで安藤さんと葉山さんと一緒に初体験いたしました。見た目グロいけど、意外にOK~。佃煮味がおいしい。中から出てくる匂いは、田舎のおばあちゃんちの奥の方の部屋みたいな匂い。ちょっと郷愁を誘うものがあるかも。
長野県内全域で愛されてきた「おかいこさま」。今も少しだけですが養蚕を続けている、南信州エリア・高森町の久保田昌幸さん御夫妻宅をお訪ねしました。「“さなぎ5つ食べれば卵1個分”といわれたのよ」と奥様がおっしゃいます。栄養価が高くて、良質なタンパク源だったんですね。養蚕が全盛だったのは昭和2~30年代で、稼ぎ頭であった蚕たちは、床の間の部屋にまで棚を作って育てられてたそう。「夜中に桑の葉を食べるザワザワいう音の中で寝てたねえ」とご主人が懐かしくおっしゃいます。養蚕が下火になったのは、需要減に伴って
収入になりにくくなったことと、果樹園の増加だと言います。「果樹園が多くなって殺虫剤を散布すると影響が出るんです。強力殺虫剤は蚕にもよく効きました。桑の葉に少しでも薬が付くと食べた蚕は死んでしまうんです。蚕は農薬に対して一番敏感な生物です。」そうか。蚕の佃煮は無農薬の証だといえるんですね。
信州の珍味・イナゴと蚕。ぜひ信州でご賞味ください。
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