穂高連峰への登頂の起点になる山小屋・涸沢ヒュッテ。読み方は「からさわ」です。穂高の山々を仰ぎ見ることができるという、あこがれの山小屋です。涸沢ヒュッテのご主人・山口孝さんは、山小屋に入って40年。今も200日の営業中150日以上は山にいるという方。北アルプス山小屋友交会会長で、北アルプス南部地区山岳遭難救助隊長でもいらっしゃいます。映画化されたコミック「岳~みんなの山」にも登場してる人です。今のようにヘリコプターでの物資輸送が可能になる前から、物資を背負って山小屋へ入ってたそうで、遭難事故があれば、病人、けが人、そして亡くなった方を背負って運んできたそうです。その山口さん、「穂高の山は、日本近代アルピニズムの原点だ」とおっしゃいます。また、涸沢と穂高の山について「日本でこんなにすばらしい山岳エリアがあるのか!っていうものを持ってる。特に秋の紅葉シーズンのあの色のすばらしさっていうのは、世界一の紅葉って言ってるんですけど、そういう場所です、涸沢はね。」と教えてくれました。ナナカマドの真っ赤、ダケカンバの黄色…穂高の山々に囲まれた円形劇場のセンターに涸沢ヒュッテがあるんですって。春先は、雪解けが始まってナナカマドの芽が残雪から出てきて、芽吹きから新緑もすばらしくて、それから夏に向け木々の成長が間近に見られるそう。また白い雲に真っ黒い穂高の山のコントラストもすばらしく、雲の流れひとつとっても毎日違っていて楽しいんだそう。毎日見ていてもすばらしい涸沢からの穂高の眺め…見てみたいなあ。
で、沸き起こった私の疑問。「どのくらいの能力があれば涸沢に、穂高に登れるんでしょうか?」
山口さん曰く「涸沢までだったら、普通に散歩できればいいよ。行きたい気持ちがあれば(ニコニコ)。朝起きて20分でもちょっと歩いてみながらコンディションを整えればいいんです。あと夕方犬の散歩がてら2~30分歩いて。それだけで涸沢には来られますよ」と。えええーっ!?「上高地が標高1500mで涸沢が2300m。800mの標高差があるけど、その半分は梓川沿いの平らなところなんです。横尾というところから若干山道になりますが、上高地を朝7時に出たら、午後1時~2時くらいには涸沢に着けますよ。だいたい6~7時間ですね。」と。なんと!意外にハードルが低いというか、何とかなりそうな感じです。ただし!「そこから上になると、結構道が急になってくるし、一気に短い距離で涸沢から奥穂の頂上3190mまでの標高差7~800mを、しかも岩や砂利地帯を登りますから、いきなり挑戦はやめておいたほうがいいですね。三点支持とか土手を使って練習したり、ジムでフリークライミングをやるとか、バランスをとる練習や体作りをしておくといいですね。」なんだそうです。
私、涸沢ヒュッテまででいいかも…と、思っていたら!「ヒュッテの屋根の上は展望台になっていて、そこで100人くらいは休んで山を見られるようになってます。しかも生ビールがありましてね。それを楽しみにくる人もいる。涸沢から穂高の山を見てビール飲んで、次の日下りるだけ。穂高には登らない。涸沢から穂高見て、風にあたり日にあたり、景色で満足してる。さわやかで涼風きらめく地上の別天地って感じでね(笑)。」ああああーっ!私、それ!それ希望しますっ!
超ベテランの山口さん。しかし「山に対する自信はあるけれど、山はいつ牙を向けてくるかわからないから、常に畏敬の念は持ってます。一歩下がって“お手やわらかに”とか“いじめないでくださいね”とか」と、おっしゃてました。そして、山歩きについてこんなこともおっしゃってました。「山を歩くってことは(穂高じゃなくても)、人間が再生されるっていうか…。こころも気持ちも体も、何か山のすがすがしさ…風にあたったり太陽にあたったりして歩くと、“自分はどうなのか”っていう、何というか蘇ってくるんだよね」と。
ますます憧れが大きく強くなりました。ちなみに山口さん、めっちゃかっこいいです
□ 涸沢ヒュッテ → http://www.karasawa-hyutte.com/
□ 信州紅葉だより → http://www.nagano-tabi.net/contents/season_guide/kouyoudayori.php