Monthly Archive for 10月, 2012

高遠そば

高遠…といえば、桜の名所として有名な高遠城を思い浮かべる方も多いはず。その高遠にあるのが「高遠そば」。辛味大根に刻みネギ、焼き味噌で食べるというおそばなんです。実は「高遠そば」、江戸時代以前からあったのに、近年までお店で食べることができなかったというそばでした。高遠では、代々お嫁に行くとその家のそば打ちを習って、皆が集まる時、冠婚葬祭時にはそばはつきものだったといいます。ですから集落ごと、家ごとの味があり、味噌に柑橘類を入れたり、夏は大根の搾り汁のみで食べたりするのです。あまりに家庭・集落食ゆえ、商売では出されてなかったようです。しかし、この「高遠そば」、なぜか福島の会津若松にどっかりと根を下ろしていたのです。その理由は、家康の孫にあったのです。
江戸の初め、高遠藩は徳川家康の孫・保科正之公が城主でした。この保科公、二代将軍秀忠の子なのですが、側室の子だったので、正室・お江の方に知れると何をされるかわからない。その怒りから身を守るため秘密裏に養子に出されていたのでした。時が流れて三代将軍家光の世になった時、異母兄弟がいる事実を知った家光によって最上へ、さらに会津へと転封されたのです。この出世移動の中、好物の高遠そばを伴って行ったため、会津に「高遠そば」が伝わったのでした。
商売として成り立っていた会津の「高遠そば」をヒントに、本場高遠の「高遠そば」を復活させたメンバーの一人、楽座紅葉軒の高島良幸さんにいろんな話を教わり、高遠そばも食べさせていただきました。楽座紅葉軒の「高遠そば」は、まず普通のつゆでいただき、後半に味噌を入れて、味を変化させていただくのがおすすめ。まず、おそばがおいし~いっ!すんごくおいし~い!大根がいい感じ。味噌を入れるとこっくりしたつゆになって、これまた美味。おまけに、もともと楽座紅葉軒は馬肉のお店なんですが、ここの馬刺しは最高~!
また、この「高遠そば」や「ローメン」、信州そばの発祥といわれる「行者そば」のある伊那市。おそばを竹かごに入れてお鍋でしゃぶしゃぶして食べる「とうじそば」や、赤カブを乳酸発酵させた漬物=すんきを入れた「すんきそば」がある木曽。そして、「高山らーめん」や「よもぎうどん」などがある岐阜県の高山市。この3ヶ所を結ぶ国道361号線を語呂あわせで「361=山麓一の麺街道」として売り出し中です。麺街道の旅もすてきでしょ?

□ 山麓一の麺街道 → http://inashi-kankoukyoukai.jp/361menkaidou/
□ 楽座紅葉軒 → http://www7a.biglobe.ne.jp/~rakuza/
□ FDA フジドリームエアラインズ → http://www.fujidream.co.jp/

 

 

唐沢そば集落

信州まつもと空港からも近い山形村には、「唐沢そば集落」とよばれる、おそば屋さんが並ぶ地区があります。歴史は江戸時代までさかのぼります。このあたりには2~3戸の家を一つ屋根にした「水車屋」が、何軒かあったそうです。近くの清流・唐沢川の水を使って水車を回し、精米や製粉を営んでいたのだそうです。ここで秋から冬にかけて「鳥焼き」という行事が行なわれてきました。山で小鳥を獲って焼き、自家製のそばを提供していたのだそうで、そのおそばのおいしさの評判が「唐沢そば集落」を生んだのです。お店ができはじめたのは明治時代に入ってからだとか。教えてくださったのは、昭和の初めからお店をやっている「からさわ屋」のおかみさん・唐沢みさこさん。「からさわ屋」は、ごく普通の大きな民家(農家)がそのままおそば屋さんになったというスタイルで、親戚のおばちゃん家に上がらせてもらってるような雰囲気です。「これが唐沢そば集落の昔ながらの店だね。もともとお客さんが“おいしい”っていうもんだから、“じゃあ、食べてきましょ(=食べておいきなさい)”って出してたもんが商売になっただけで、だから商売やる家のつくりじゃないの」と、おっしゃてました。唐沢そば集落の最初の形を残しているのは、この「からさわ屋」だけになってしまったそうです。
 

そして、そば。ほんとうにおいしい!感激している私に、「いやいや、やっぱり新そばの時期=10月下旬から11月・12月が、いちばんおいしい」と、みさこさん。ふうむ。新そばって違うんですね?「やっぱり新そばは風味が強いね。お客さんが言うには“甘みがある”って。昔のお客さんは、どんぶりに水を張って、それにそばをつけて食べてたね。薬味ものせないの。本当のそばの味を味わうために」とのこと。水そばっていうそうです。「からさわ屋」のおそばは、自家用で栽培して天日干しして、みさこさんとお嫁さんのちよさんが打ったおそば。とってもおいしいおそばです。さらに、おまけで出してくださるお漬物が、またまた美味なのです。
 

もうひとつ気になったのが、みさこさんのお肌のツヤツヤ感。水車をやっている家の人は『車屋美人』といって美人が多かったんだそうですよ。きれいな川の水を使って生活してるからでしょうか?ちなみに集落の入口には『車屋美人』とよばれる道祖神もあるんです。ちょっとロマンチックな男女の出会いっぽいモチーフです。

 

□ 唐沢そば集落 → http://www.vill.yamagata.nagano.jp/forms/info/info.aspx?info_id=5220
□ FDA フジドリームエアラインズ → http://www.fujidream.co.jp/

食のワンダーランド!信州~ローメン

ローメン。それは伊那市名物のメニュー。基本は、蒸し麺+キャベツ+マトンの組み合わせで、スープ風と焼きそば風があります。
 

マトン(羊肉)と聞いて、ちょっと身構えてたんですが…。おいし~い。これは、いける。マトンの臭みはありません。スープ風は、汁がうっすら入った、優しい味の長崎皿うどん(太麺)ってお味。しかもすごいのが、このローメン。ソース・酢・ごま油・七味唐辛子・おろしにんにくを、自分の好みでばんばん投入して、自分好みの味を完成させるんです。それって、料理人に対して失礼なんじゃないの?作ったほうはそれでいいのか?食べさせてくださった「萬楽」の大将曰く「もともと、お客さんの要望から生まれたメニューだから、それぞれが自分の好みに味を決めてくれてかまわない。自分はローメンは、お客さんが生んで育ててくれたメニューだと思ってます」と。大将は、ローメンの生みの親「萬里」で修行してた方。「焼きそばを頼んだお年寄りが、“固いからスープを入れて”と言われ対応したのが始まり」という情報も教えてくれました。「じゃ、老人用の麺でローメン?」と聞いたら「違いますよ。もともとは炒める(チャー)肉(ロー)の麺(メン)=のチャーが外れて、ローメンになったんです」と。あ。失礼しました。お客さんが作った点は他にもあって、ローメンには「大盛」「超大盛」さらに「超超」などがあります。これは、伊那にある信州大学農学部の学生さん達からの要望で生まれたサイズ設定。私がおじゃました時にも“ほぼ毎日ローメンを食べる”という、ローメン愛に生きているおじさまがいらっしゃいました。まさに伊那のソウルフード。ぜひ、現地で食してほしい一品です。ローメンを提供している料理人のみなさんでは「ローメンズクラブ」なるものを結成して、ローメン文化の振興に努めてらっしゃいます。
□ 伊那ローメンズクラブ → http://romenz.lfchs.com/
□ 伊那市観光協会 → http://inashi-kankoukyoukai.jp/
□ FDA フジドリームエアラインズ → http://www.fujidream.co.jp/

 

 

食のワンダーランド!信州~ソースかつ丼

さくさくの衣に包まれたトンカツに、とろんとまとわりつく甘めダシの効いた卵…それが私たちのカツ丼。しかし、信州・駒ヶ根市~伊那市あたりの「伊那谷(いなだに)」とよばれるエリアの人たちにとっては違うのです。ごはんの上はせん切りキャベツ、そしてソースにくぐらせたトンカツ…いわゆるソースかつ丼。それが伊那谷の人たちにとってのノーマルなカツ丼なのです。ちなみにソースは店ごとに違いがあるのですが、ウスターソースとしょうゆ系を足したようなちょっと濃厚なタイプです。駒ヶ根っ子で駒ヶ根人の50代、中央アルプス観光(株)取締役・竹村章さん曰く「ソースカツ丼が駒ヶ根の人にとって普通のかつ丼。小さい頃からそうでした。一般に店に行って“カツ丼ちょうだい”って言ったらソースかつ丼が出てきます。だから大きくなって外に行って、卵とじのかつ丼が出てきてびっくりしました。みんなそう。そういう世界です。卵とじのが食べたければ、わざわざ言わなきゃ食べられません」とのこと。街のあちこちにソースかつ丼を出してくれる店がたくさんあります。今回は、早太郎温泉エリアにある「駒ヶ根ファームス 南信州ビール味わい工房」でいただきました。やっぱり、おいしい。マヨネーズを使ったソースかつ丼も美味~。
 

以前取材でおじゃました、駒ヶ根ロープウエイに乗ってたどり着く、標高2300mの宿「ホテル千畳敷」でいただいたソースかつも、めちゃおいしかったです。また、諏訪湖畔にある養命酒が運営しているこだわりの品を集めたレストランとショップ「くらすわ」でも、おしゃれなソースかつが…。
 

お土産にソースかつ丼のソースや、ソースかつ丼味のスナック菓子などもありますが、早太郎温泉にある「ホテルやまぶき」では“ソースかつまんじゅう”を販売しています。料理長曰く「温泉饅頭の持ち味を生かしたかったので、甘めの皮にして、カツに使う肉も工夫してます」という一品。魅惑のソースかつワールドにぜひ足を踏み入れてください。
□ 駒ヶ根ソースかつ丼公式サイト → http://www.komacci.or.jp/katsu/
□ 中央アルプス観光 → http://www.chuo-alps.com/index.html
□ 南信州ビール → http://www.ms-beer.co.jp/index.html
□ 駒ヶ根観光協会 → http://www.kankou-komagane.com/index.php
□ FDA フジドリームエアラインズ → http://www.fujidream.co.jp/

 

製糸の町・岡谷を歩く

諏訪湖ほとりの岡谷市は、製糸業で日本の成長を支えた町です。ここでは近代化産業遺産をめぐる旅が楽しめます。案内してくださったのは、諏訪湖エリアまちなか観光案内人協議会副会長の橋爪まことさん。地元育ちで、しかも昔は製糸業をなさってたお家ということもあり、とても詳しくおもしろい話を聞かせてくださいました。
豪奢な製糸王の様子を感じるなら「旧林家住宅」へ。明治40年代に完成した洋館と日本家屋(母屋・離れ・茶室)の併せ技がすごい。しかも蚕蔵の機能がある土蔵もあるんです。土蔵造りの離れの2階には金唐紙といわれる贅沢な壁紙をめぐらせた客間があったり、こだわりぬいた欄間飾りの彫刻やふすまの引き手など、巧みの技がちりばめられた邸宅です。橋爪さんは「当時、商売相手だった外国人との取引き場所として重要な役割を果たした家だ」と教えてくれました。外国人客を通したのは洋館部分で、松が植えられたロータリー、入口横に寄木細工が美しい応接室がありました。さらに重要な話をする時は、金唐紙の離れへ。濃紺や深緑など濃い色のベースに渋く光る模様が重厚感あふれてます。「外国人の目に合わせた、少し暗くてどっしり部屋で商談を進めたのですから、おもてなしと有利に話を進めるための演出を考えていたんです」とのこと。印象としては、九州で言えば炭鉱王の邸宅…飯塚の伊藤伝衛門邸や、唐津の高取邸みたいな感じです。
 

 

 

続いては、旧山一林組製糸事務所・守衛所。事務所は大正14年完成のレトロな美しい木造タイル張りの建物。しかし、昭和2年、戦前の日本最大の労働争議があった場所でもあるんです。1300~1500人もの女工たちが、待遇改善を求めて19日間の座り込みを行ないました。当時の女工たちの年齢は11歳とか12歳が中心。近隣だけでなく山を越えて飛騨高山あたりからも、一家を支えるため働きにきていました。一番稼ぐ子で年間100円=6軒長屋が2棟建てられるくらいをもらっていたそうです。彼女達の要望は、「狭い寮に雑魚寝状態なので、少し空間が欲しい」とか、「夕飯のおかずを一品つけてほしい」といった内容だったそう…。彼女達は、毎日出勤簿をつけながら守衛所を通って、がんばってたんですね。
 

「ああ野麦峠」や「女工哀史」などの作品から推測すると、辛いことがてんこ盛りの女工たちのように思ってましたが、それだけではないことが、橋爪さんとの散策でわかりました。その一つがお蚕様の供養塔です。昭和9年、製糸関係者や女工たち、合わせて3万人もの寄付金(当時の5000円)で作られました。いいことや感謝の念があればこそ寄付したんでしょうとのこと。当時は、世の中全体が貧しくて、地方によっては身売りするしかない場合も多々あったわけです。「岡谷に来て糸を作れば、みんな家にお金を持って帰れて、毎日ごはんが食べられたんですよ」と、橋爪さん。憩いの場として公園が作られたり、運動会が行なわれたり、低年齢の子は小学校に行けたり、いいこともあったんだそう。なるほど。新しい視点をいただきました。
 

そして、小高い丘の上にある丸山タンク。一周38m、高さ2m、壁の厚さは60cmのタンク跡です。当時、水を引いてきて水車を回して動力にして糸をとっていました。20mの高低差がある天竜川の水を汲み上げるため丸山タンクが作られました。この中で水を回して浄化槽として使って、各所へ水を流していたそうです。なぜ、わざわざ浄化するのかというと「生糸は水を使って作ります。きれいな水でないと糸が濁った色になる。製糸業は水が命」と、橋爪さん。また、タンクで汲み上げられた水は田んぼにも回して、町全体で潤ったんだそうです。製糸業で町が栄え国を支えた諏訪湖エリア。その後モノを作る力は、味噌・醤油、さらにヤシカカメラ、三興オルゴール、服部セイコーへつながり、さらにさらにエプソン、オリンパスカメラへとつながっていく…そういう底力、モノ作りの力を若い人に感じてほしい。そんな思いで橋爪さんは町を案内してらっしゃるそうです。
□ 信州岡谷観光サイト → http://www.kanko-okaya.jp/
□ 諏訪湖エリアまちなか案内人 → http://www.suwako-kankouguide.com/
□ FDA フジドリームエアラインズ → http://www.fujidream.co.jp/